自転車で長い距離を乗るには?(乗り方編)

自転車で長い距離を乗るには?~乗り方編

自転車旅行に出ると、「どれだけ長い距離を乗る事ができるか?」が重要になって来ます。

あまり時間を気にしなくて良いタイプの旅行者はともかく、休暇などの期間が決まっている場合は、“こげる距離”“旅行の自由度”に直結します。長ければ長いほど遠くまで行けますし、それほど遠くまで行く必要が無くても、自分の上限距離が長い方が心に余裕が出来て旅行が楽しくなります

旅慣れた自転車乗りのSNSなんか見ていると「今日は少しがんばって260km走りました」「のんびりしたかったので今日は120kmしか進んでません」などの発言が普通に見られ、まだ長い距離を乗り慣れていない方は『この人達は根本的に体力が違うんじゃないか・・・!?』などと思ってしまいがちですが、実は長く走れるコツや習慣を身に付けていれば、この辺の領域には割と簡単に到達できます

と言う事で、今回は【自転車で長い距離を走れるコツ】【乗り方】をまとめました。もう一件、【こげなくなる要因編】もあるので、興味があればこちらもどうぞ。。

なお、あくまでも自転車旅行する方向けなので、「重い荷物を積んでる」「速度はさほど気にしなくて良い(巡航速度20km/h前後)」「ほぼ毎日乗り続ける」と言った条件が前提です。ほぼ身一つで自転車に乗るようなサイクリングや、レース目的の方、通勤通学程度の方、トレーニング目的の方には当てはまりません。

 

基本姿勢

“自転車に乗る正しい姿勢”って実はいろんな説があって、どれもそれなりに理にかなっているんですが、自転車旅行では”正しい姿勢”よりも“自然で楽な姿勢”でいる事の方が重要です。そもそも骨格や筋肉の付き方、体重は個人差が大きいわけで、一概に「この姿勢が正しい!」と言うのはなかなかありません。

なので、基礎中の基礎だけはおさえつつ、あとは自然な、中庸な感じの姿勢になるようにするのが良いと思います。

 

基本は三点支持

スポーツサイクル(ロードバイク、クロスバイク、マウンテンバイクなど)に乗る際の、体重のかけ方は三点支持が基本です。下の図のような感じで、お尻&サドル、腕&ハンドル、足&ペダル、この三点で身体を支えます。

 

と言っても、意識しなくてもお尻には絶対体重がかかりますし、自転車をこいでいる限りペダルにも一定の体重がかかります。一番意識したいのは腕です。

自転車に乗り慣れていないと少し怖く感じるかもしれませんが、思い切って前傾し、腕を使って上体をハンドルに預けるくらいの感覚くらいでちょうど良いです。

 

サドルとハンドルの位置関係

前述の通り、基本的には前傾で乗る方が好ましいです。しかし、やはり人間の体と言うのは基本的に垂直の状態で活動するように出来ているもの。レース用自転車のように、サドルの方がハンドルより高いくらいの位置関係になってしまうと、長時間乗るのは少しツラくなります

自転車旅行だとサドルとハンドルは同じくらいの高さか、もしくは心持ちサドルの方が低いくらいがオススメです。個人の体重や腕力にもよるので、長時間乗ってもツラくない位置を自分で探すと良いです。

 

こぎ方

足とペダルの位置

これはすごく基本的な事なんですが、足の土踏まず部分をペダルに置いてはいけません

走ったり跳んだりする時に、土踏まずで地面を蹴らないですよね。地面を蹴る場所、土踏まずよりもっと指の付け根側をペダルに置きましょう

もっとも、これはビンディングペダル(靴底に留め具が付いた専用シューズを履いて、ペダルに引っ掛けるタイプのペダル)を使っていたら足は自然にその位置になるので、自転車の装備を何から何まで揃えてる人は、特に意識する事は無いと思います。

しかし、自転車旅行者は自転車の装備よりもキャンプ用品などを優先して揃える傾向があるため、フラットペダル(普通のペダル)の人も多く、たまに出来てない人がいます。フラットペダルの人は足を置く位置を意識しましょう。

 

“踏む”ではなく”こぐ”

日本語上は「ペダルを踏む」「ペダルをこぐ」のどちらの表現でも意味が通じますが、実際効率が良いのはペダルを”踏む”ではなく“こぐ”方です。

自転車に乗っている間中、基本的に常に両足はそれぞれのペダルに置かれているはずですが、前に進もうと思った時、おそらく何も知らなければ上にある方の足でペダルを踏んで押し下げ、今度は代わりに上がって来た足でペダルを踏み下げ・・・と言う“ペダルを踏む”動作が自然だと思います。

しかしこれだと、この時反対側、つまり下から上に上がって来る側の足は完全に休息してしまいます。これは非常にもったいない

そこで、下から上に上がって来る方の足でも、ペダルを上に引き上げるような力の入れ方をします。

こうする事で上から下に踏み下げる方の足の負担が減りますし、また引き上げる動作と踏み下げる動作では使う筋肉が違うので、広い範囲の筋肉に負担が分散し、一カ所の筋肉だけ疲労すると言う事態を避ける事ができます。特に登り坂では、これを意識するだけで疲労度が全然違います。

 

ペダルの回転数

ペダルの回転数(ケイデンス)は自転車でのトレーニングや長距離レースでは非常に重要な数字ですが、自転車旅行では正直そこまで気にしなくても良いです。1分間に70~90回転が最も効率が良いと言われていますが、自転車旅行で実際にやるとちょっと速過ぎてしんどいです。そもそも前後に20kg~30kgの荷物を積む事も珍しくない自転車旅行、あきらかに条件が異なります。

とりあえず自転車旅行でペダルの回転数を意識するとしたら、以下の2点。

・こぎ始めに「ちょっと軽いかな?」と感じるくらいがちょうど良い
・平地と登りでできるだけ回転数を変えない

この程度で良いです。わざわざケイデンス計測ができるサイクルコンピュータを買う必要もありません。あれば使ったらいいと思うけど。

『軽めの負荷でずっと同じくらいのペースでこいでるな~』くらいの意識の仕方でOKです。

 

長い登りは乗り方を変える

日本で自転車旅行をしていたら、ほぼ避けて通れないのが山越え。長い長い登り坂にもいっぱい遭遇します。

重い荷物を乗せて長い登りを克服するには、立ちこぎと座りこぎを上手く切り替えるようにしましょう。立ちこぎと座りこぎでは使う筋肉を変える事に意識を向けて下さい。立ちこぎは膝より下のふくらはぎを中心に、座りこぎは膝から上の腿の筋肉を使います。交互にどちらかの筋肉を休ませるイメージです。

割と自転車乗りの中では「立ちこぎは負け」と言う風潮がありますが、気にしちゃいけません。自転車旅行者はまだその坂の後に何百キロ、何千キロと行かなければならんのです。大事なのは旅程を完遂する事であって、目の前の坂の登り方ではありません

個人的には、なんなら変な意地張らずに自転車から降りて押して歩いたり、休憩したりするのも全然構わないと思っています。自転車旅行ってのは誰とも競ってるわけじゃありません。しょうもない意地に体力を使っても仕方ないです。長く楽しく乗り続ける事だけが大事なのです。

 

身体の動きを意識する

肩ひじ張らない

自転車に乗る時は三点支持で・・・とは言いましたが、肩と腕がガッチガチの状態で腕に体重をかけ続けると、めちゃくちゃ肩が凝ります。肩と腕なんて普段負荷をかけ続ける部位ではないので、当たり前と言えば当たり前です。

なので、できるだけ肩の力を抜き、腕は軽く曲げた状態にし、手・腕・肩・背中上部全体でふわっと負荷を受けるようなイメージで乗りましょう。この方がハンドリングもスムーズだし、地面からの衝撃も吸収できます。

ただ、サイクリストに時々いる、めちゃくちゃ肩を丸めている人の真似をする必要はないと思います。あくまでも自然にふわっとしたラインを描くくらいで良いです。

 

身体の中心をブレさせない

これは多くのスポーツで共通しますが、自分の体の芯を意識してください。身体の中心に一本軸が通っているようなイメージです。そして、いくら自転車をこいでもその芯が左右にブレないようにこいで下さい。

芯がブレると、身体の力がブレた方向に分散したり、自転車が受ける抵抗が増えて効率が悪くなったりします。

初めての人にはイメージが少し難しいかもしれませんが、これが出来るといろんなスポーツで応用できます。他のスポーツをやってた方は、自転車でも割合簡単にコツがつかめると思います。

ちなみにこのイメージトレーニングは日常生活の中でもできます。意識しなくとも芯がまっすぐな状態を保てるのが理想ですので、自転車に乗っていない時でも意識すると良いです。

 

腹筋と骨盤を使う

自転車は足だけでこぐ物ではありません。足と言うのは優秀なので、意識しなくても勝手に動いてこいでくれます。そして勝手に疲れます。

放っておいても動いてくれる足は置いておいて、意識したいのは腹筋と骨盤腹筋を使って骨盤を回し、それに伴って足がペダルをこぐようなイメージです。

腹筋はかなり強い筋肉なので、足の負荷を一部肩代わりさせても大丈夫です。腹筋を使う事で、足の筋肉の疲労を軽減してくれるわけです。

 

足はやや内股がベスト

ペダルに置いた足から膝にかけての角度ですが、これはほぼ平行からやや内股くらいがベストと言われています。これはこの角度が一番力が入りやすいからです。いろんな角度でこいでみると実感できるかと思います。

なお、両膝の動線が自転車の上で交差してしまうくらいの内股は行き過ぎです。あくまでも平行~微妙に内股くらいです。

 

骨盤の角度

骨盤の角度について、「正しい」とされている意見は、現行で2通りあります。『骨盤は垂直で猫背で乗る』『骨盤から前傾させて背中は真っすぐで乗る』かです。まったく正反対ですね。

ここでは、このどちらが良いとか議論するつもりはありません。両方ともそれなりに理にかなっています。

が、正直ボクは、乗りやすければどっちでも良いと思うのです。普段の姿勢や骨格・筋肉の付き方でも楽な乗り方は個人で違うでしょうし、フラットハンドルだとそもそも猫背乗りはやりにくかったりします。

それに、本当に毎日毎日長時間自転車に乗っていると、骨盤を立てていると尻の骨が痛くなり骨盤を前傾させていると股間が痛くなるので、ボクは数時間ごとに骨盤の角度を変えています。「さっきまで前傾させてたからしばらく立てるのを意識しよう」みたいな。

骨盤を立てる派も寝かせる派も、どちらもそれぞれの理屈があるようですが、両方の乗り方を念頭に置きつつ、自分がそれなりに楽な姿勢で乗ったらそれで良いんじゃないかなぁと思います。

 

休憩

休憩は絶対に必要!

ボクの体験談ですが、ボクは中学生でクロスバイクを買ってもらい、週末に日帰りであちこちに出かけると言う事を繰り返していました。

17歳の時にサイクルコンピュータを購入し、それでようやく自分の走った距離が正確に分かるようになりました(スマホが無い時代でしたので)。

そして、どうやら自分は“90kmを超えると途端にバテてこげなくなる”と言う事に気付きました。あちこち出かけても一向に強くなりません。90kmを超えたらほぼ確実に足が動かなくなってしまいます

「あぁ90kmが自分の限界なのかな」などと思っていたある時、ふと「定期的に休憩を取ってみてはどうだろう」と閃きました。それまで1日中自転車に乗っても休憩などろくにとった事がなく、朝自宅を出発して、昼飯はコンビニの駐車場で立ったまま食べ、夕方までこぎ続け、ヘロヘロで帰宅すると言うスタイルでした。今思うとアホでしかありません。

そこで、ある週末のロングライドの際、しっかり休憩をとる事にしました。とりあえず「2時間走ったら15分休憩。何かを一口食べる」と言うルールを決めて出発し、きっちりそれを守ってみました

結局その日は、体力に全然余裕がある状態で帰宅。サイクルコンピュータは125kmを表示していました。壁をひとつ超えたようで気分が良かったのを覚えています。

休憩を定期的に取る事に決めてからは、1日当たりの距離がメキメキ伸び、巷で言われる“150kmの壁”にぶち当たる事も無く、『20kgの荷物を積んで1日で260km走れる身体』になりました。身一つで90km走ってヘロヘロだった事を思うと、飛躍的な進歩です。

話を戻すと、休憩ってそのくらい大事なんです。

 

どのくらいの頻度で休憩する?

平均30km/h以上の速度で走っているようなサイクリストだと1時間に1回休憩を取ったりもしますが、そこまでガツガツこがない自転車旅行ではもう少しサイクルを伸ばしても大丈夫です。

ボクは1時間~3時間までいろんなサイクルを試しましたが、結局一番最初にやった”とりあえず”のルール、『2時間に1回、15分休憩』が最も自分に合っているようです。気分的にも2時間ってちょうど飽きが来る頃ですし。

当然、登り坂のあるなしや平均速度、個人の体力や適性によってもベストな頻度は変わると思いますが、あんまり意識して休憩を取ってない方はとりあえず『2時間に1回、15分休憩』を導入してみてはいかがでしょうか。走れる距離が飛躍的に伸びるかもしれませんよ。

 

大休憩も設ける

ボクの場合、大休憩も1日に2~3回取ります。ボクの自転車旅行はたいてい早朝出発で、10時台に1回目の大休憩、15時頃に2回目の大休憩を取ります。深夜まで走る場合に限り、20時頃にも大休憩を取ります。

また、真夏は昼の走行を避けて11時で午前の部を切り上げ、16時頃まで仮眠を取ったりします。大休憩は季節や自分の体力・生活習慣に合わせて取り入れましょう。

 

どんな休憩をする?

ベンチよりも、可能であれば段差の少ない縁石のような場所に座って、軽く足をストレッチさせながら、甘い物をちょっとかじるのが理想的です。

完全に足を休ませてしまうと、休憩あけに固まって動かしづらくなってしまうので、足はしんどくない程度に動かし続けましょう。足指を開閉させたり、足首から下をグルグル回したり、腿の前後を伸ばしたり、ふくらはぎを伸ばしたり、膝を回したり、とりあえずバタバタ動かしたり、とにかくあれこれやっておくと、休憩明けもスムーズに動き始められます。

足を動かしつつ、おやつを食べるなりコーヒーを飲むなりしてリラックスしましょう。

自転車旅行は長丁場なので、栄養素にこだわって食べたくもない栄養食品を無理に流し込むよりも、胃に負担がかからない程度に自分の好きな物を飲み食いして精神的にリフレッシュする方が良いです。休憩はできるだけ楽しいものにしましょう。

 

自転車で長い距離を乗るには?~乗り方編まとめ

どれも自転車の同好会やサークルなどに入っている方には基本的な事ばかりですが、独学だと意外と知らない事もあると思い、まとめてみました。

自転車でレースに出たりしようと思うとまた別世界の話ですが、自転車旅行でとにかく長い距離を乗る事だけを考えるなら、基本的な事をしっかりマスターする事で誰でもそれなりに乗れるようになります。地道に行きましょう。

と言う事で、自転車で長い距離を乗るコツ(乗り方編)をまとめました。近々「自転車で長い距離を乗るコツ(足が止まる要因編)」でもう1記事まとめるつもりです。

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